夜空の奥で、ゆっくりと動きながら光る、巨大な星―それが木星。望遠鏡をのぞくと、しましま模様や赤い丸い模様が見える、ちょっとふしぎな星です。今回は、「木星ってどんな星なの?」という素朴な質問から始まった、夜の小さな会話たち。太陽系でいちばん大きくて、でも地面がなくて、まるで雲のかたまりのような星。子どもたちのまっすぐな疑問が、宇宙の大きな秘密をそっと開いていきます。
第7話 木星―いちばん大きな惑星
糸島の海辺にひっそりと開くカフェに、宇宙にくわしい天の川教授がやってきました。子どもたちのまっすぐな質問に、やさしく、時に熱く答えてくれる物語です。星や月を見上げながら「宇宙ってなんだろう?」を一緒に考えてみませんか。
ある夜、レンくんが湯気の立つマグカップを両手で包みながら、ふとつぶやいた。

ねえ天の川さん。いちばん大きな星って、どれ?
空を見上げながら、ひかりちゃんも静かに言った。

木星って、大きいんでしょ? どれくらい大きいの?✨
カウンターの奥で静かに片付けをしていた天の川教授は、その問いにやさしくうなずくと、グラスの水を一口飲み、ゆっくりと語り始めた。

木星はね、太陽系の中でいちばん大きな惑星なんだ。
直径はおよそ14万キロメートルで、地球のおよそ11倍。重さは地球の318倍もある。だけど不思議なことに、ほとんどがガスでできているんだ。表面に地面はなく、雲がいくつも重なって、その下には深くて濃い大気が続いている。見たことがあるかな? あの木星のしましま模様… あれは全部、大気の流れでできた雲なんだよ。その中でもひときわ目を引くのが、大赤斑って呼ばれる巨大な赤い渦。

木星の衛星に生命がいる可能性
これはね、木星の南半球にある、地球の1.3倍くらいの大きさをもつ巨大な嵐なんだ。大赤斑と呼ばれていて、300年以上もずっと回り続けている、ものすごい風の渦だよ。そして木星には、なんと40個以上の衛星(=月)がある。その中でも有名なのが、ガリレオ衛星って呼ばれる4つの大きな月。そのひとつ、エウロパには氷の下に海があるかもしれないと言われていて、そこに生命がいる可能性があるかもしれないんだ。
レンくんとひかりちゃんは、じっと聞き入っていた。大きくて、謎が多くて、地球とはまったく違う… そんな木星の姿に、想像がふくらんでいく。天の川教授は窓の外を見ながら言葉を続けた。

木星は、太陽系の守り神とも呼ばれている。
あんなに大きな体で、宇宙の中を飛び交う小さな隕石や小惑星を引きつけて、地球を守ってくれているんだよ。見えないところで、私たちを静かに支えている存在… それが木星なんだ。

うにゃあ…あぁ。ほいっ、ぼくも大きくなるにゃん!

うふふ… 大きくて、強くて、やさしい星……なんだか、お月さまの反対側にいるお兄さんみたいですね。
木星は大きくて、静かで、力強い…
空を見上げても、木星の姿はすぐには見えないかもしれない。けれどその遥か彼方で、しま模様の星は、今日も変わらず、ゆっくりと回り続けている。地球よりずっと大きくて、地面もなくて、嵐が何百年も続いていて… それでも、私たちの住む星を見えないところでそっと守ってくれている。
小さな命の星を、大きな体で包むように支えてくれる木星。それはまるで、遠くにいてもずっと見守ってくれる、やさしい誰かのようだ。ふたりの子どもたちは、星の話を聞いたあとも、しばらく何も言わずに空を見つめていた。あの向こうにきっとある。大きくて、静かで、力強い、そんな星の姿を思い描きながら。

NASA: https://science.nasa.gov/jupiter