夜空にぽつんと光る、赤い星―それが火星。地球のすぐおとなりにありながら、私たちにはまだ遠くて、どこかミステリアスな存在です。今回は、「火星ってどんな星なの?」という素朴な疑問から始まった、夜の小さな会話たち。火星の景色は? 空気はあるの? 人は住めるの?子どもたちのまっすぐな好奇心が、太陽系のもうひとつの世界を優しく照らします。
第6話 火星―赤い惑星の謎と魅力
糸島の海辺にひっそりと開くカフェに、宇宙にくわしい天の川教授がやってきました。子どもたちのまっすぐな質問に、やさしく、時に熱く答えてくれる物語です。星や月を見上げながら「宇宙ってなんだろう?」を一緒に考えてみませんか。

ねえ!天の川さん。火星って、どんな星なの!?

なんか、地球にちょっと似てるって聞いたことあるけど… 本当?
ひかりちゃんが、月を見上げながら、ぽつりとつぶやいた。

火星。それは、太陽系のなかでもとても興味深い星なんだ。
天の川教授はそっと頷き、目を細めると、グラスの水をくるくると回しながら語り始めた。
地球のすぐ外側を回っていて、赤い惑星とも呼ばれている。赤く見える理由はね、火星の地面に酸化鉄(さび)がたくさん含まれてるから。いわば、地面がさびだらけで星全体が赤茶けて見えるんだよ。オーストラリアにあるウルル(エアーズロック)っていう赤茶色の大きな岩山、知ってるかな?あれとちょっと似ていて、火星も一面が赤い岩と砂におおわれていて、まるで星そのものが巨大なウルルみたいな景色なんだ。

火星は第二の地球の可能性がある
火星は地球の約半分の大きさで、地表は二酸化炭素を主成分とする薄い大気に覆われています。その気圧は地球の1000分の6ほどととても低く、大気が熱を保ちにくいため、昼間でも気温は低く、全体として非常に寒い星なんだ。重力も地球より弱く、いろいろなものが軽く感じられるけれど… そんな火星にも、かつては川や湖があったかもしれないという痕跡が見つかっている。今はすっかり乾いてしまっているけれど、表面にはまるで水が流れたような地形が広がっていて、遠い昔の姿を今に伝えているんだ。
さらに最近では、人類が火星に行こうと準備を進めている。探査機が着陸して、土を調べたり、岩を調べたりして、もしかしてここに昔、命があったんじゃないか?というヒントを探している最中なんだ。

じゃあ、火星に人が住める日が来るかもしれないの?✨

うん。すぐではないけど…
将来、人が住めるようにしようと本気で考えているよ。ただし、今の火星はとても厳しい環境。空気も水もないし、放射線も強い。でも、それでも火星を目指すのは、そこに「第二の地球」の可能性があるからなんだ。火星を知ることは、地球をもっと深く知ることにもつながる。そしていつか、火星の空を見上げて、地球って、すごかったなって思う日が来るかもしれないね。

ころんと丸くなりながら、火星で産まれた猫も誕生するにゃあ…
青い奇跡の地球と温かいハーブティー

はい、お茶をどうぞ… 誰もまだ行ったことのない場所に、想いを馳せる夜っていいですね。
カウンターの向こうで、あたたかいティーの湯気が立ちのぼる。遠い火星の空には、風もなく、音もなく、ただ赤茶けた大地が広がっているという。でもその静かな景色の下には、かつて水が流れた跡や、生命のかすかな記憶が眠っているのかもしれない。
地球のすぐそばにあるのに、まだ足を踏み入れたことのない星。その向こうには、私たちがまだ知らない未来の場所がある。火星を見つめることで、私たちは今、自分たちが立っているこの青い地球の奇跡にも、そっと気づかされる。
いつか火星に立てる日が来たら、きっと誰もが、地球のあたたかさを恋しく思うのだろう。

NASA: https://science.nasa.gov/mars