冬の夜空を見上げたとき、まっすぐに並ぶ三つの星に、ふと目がとまったことはありませんか?それは「オリオン座」、夜空に描かれた狩人の姿―リゲルの青い輝きと、ベテルギウスの赤い光が、静かに物語を語りかけてきます。今夜は、このオリオン座に秘められた星と神話の物語をめぐって語り合います。
第12話 オリオン座―夜空の三ツ星
糸島の海辺にひっそりと開くカフェに、星と神話を愛する瑠菜(ルナ)教授がやってきました。子どもたちのまっすぐな質問に、やさしく、答えてくれる物語です。星や月を見上げながら「宇宙ってなんだろう?」を一緒に考えてみませんか…
海辺の夜風が静かに揺れる中、冬の星座がくっきりと浮かんでいた…。

ねえ、あれ見て! まっすぐ三つ並んでる星、見える?

うん、まっすぐでカッコいいよね。ベルト? 剣?✨
そこに、静かに椅子を引く音がして、流菜(ルナ)教授が一冊の本をテーブルに置く。

そう、オリオン座よ。冬の夜空でとても目立つ星座のひとつ。
まっすぐ並んでいる三つの星は「オリオンの帯」と呼ばれていて、その両側には、青白く輝くリゲルと、赤く大きなベテルギウスがあるの。神話の中でオリオンは、海の神ポセイドンの息子といわれているの。とても背が高く、誇り高い狩人だった。その姿が星座として空に描かれたのよ。戦う姿を保ったまま、空の戦士になったとも言われているわ。

えっ、星って人の姿なの? 星って生きてるの?

赤い星と青い星があるってさっき言ってたけど、それってどう違うの?

いい質問ね。星は生きてるというより…
生き物のように変化する存在なの。青いリゲルは、まだ若くてエネルギーにあふれている星。一方、赤いベテルギウスは、寿命が近づいた年老いた星。このふたつが、オリオンの両肩にある。つまり、始まりと終わりが一緒に空に描かれているのよ。
オリオンの三ツ星と星のゆりかご
オリオンの三ツ星のすぐ下にあるオリオン大星雲はね、遠く離れた宇宙で、星たちが生まれている場所。そう、まるで「星のゆりかご」のような場所よ。夜が澄んだ日には、肉眼でもうっすら見えるの。ぼんやりと光っていて、静かだけれど、そこでは新しい命が生まれているのよ。

くんくん… オリオンもドーナツでひと休みしてたら、戦うのやめてたかもしれないにゃ。

そうね。星空に武器を持った戦士がいるのも面白いけど、カフェでお茶してる星座があってもいいかもね。

そう、星の名前や並びには、私たちの祖先が空に託した物語があるの。
オリオン座も、ただの星の集まりじゃなく、人間が星に意味を見つけようとした証なの。だからこそ、空を見上げるとき、私たちは昔の人の想像力とつながっているのよ。見上げるそのたびに、星たちは語りかけてくるの。君はどんな物語を空に描くの?って。星座はね、いつだって次の語り手を待っているのよ。
レンくんたちは空を見上げながら、遠い昔の物語に耳をすませていた。夜空には、オリオンの三ツ星がやさしく静かにまたたいていた。
オリオン座を見つける2つのポイント

- 冬の夜空で、まっすぐ横に並んだ三つの明るい星を探してみて。これが「オリオンの帯」と呼ばれる、オリオン座の中心部分です。
- 三ツ星の左上に赤い「ベテルギウス」、右下に青白い「リゲル」が光っています。この2つの色の違う星を結ぶとオリオン座が見えてきます。

国立天文台(NAO):https://www.nao.ac.jp/