古代エジプトの砂漠にそびえる巨大なピラミッド。そして、冬の夜空にまっすぐ並ぶ三つの星―オリオン座の帯。遠く離れた地と空が、実はぴたりと重なっているかもしれない…。そんなロマンと謎に包まれた物語が、今夜も静かに語られる。子どもたちと一緒にひも解くのは、ピラミッドとオリオン座をつなぐ、遠くて近い不思議な話。
第13話 ピラミッド―三ツ星との謎
糸島の海辺にひっそりと開くカフェに、星と神話を愛する瑠菜(ルナ)教授がやってきました。子どもたちのまっすぐな質問に、やさしく、答えてくれる物語です。星や月を見上げながら「宇宙ってなんだろう?」を一緒に考えてみませんか…
この夜も、潮の音と星の光が、会話をやさしく包んでいた。

ねえ、ピラミッドって、オリオン座✨と関係あるって聞いたけど…
ホントなの?

よく知っているわね。
ええ、実はエジプトのギザにある三大ピラミッドの配置が、オリオン座の三ツ星にそっくりだと言われているの。この説が注目されたのは1990年代。『オリオン・ミステリー』と呼ばれて、世界中の考古学ファンをざわつかせたのよ。
三つのピラミッドはそれぞれ、オリオンの帯に並ぶ三つの星―アルニタク、アルニラム、ミンタカ―と対応している、というの。しかも、オリオン座は古代エジプトでオシリス神と重ねられていたわ。オシリスは死と再生を司る神であり、ファラオの魂が死後、彼のもとへ向かうと信じられていたのよ。
オリオンの三ツ星と魂の旅路

でもさ、昔の人がそんな正確に、星と同じ形にピラミッドを作れるの?

なんで、オリオン✨だったんだろう?もっと他の星じゃなくて?

古代の人々は、星をただの光としてではなく、神の世界と見ていたの。
とくにオリオン座は、夜ごと東から昇り、西へ沈んでいくその姿が、魂の旅路に重ねられていたのかもしれないわね。ピラミッドは、単なる墓ではなく、魂を星へと導くための装置だった…。そんな考え方もあるの。もちろん、科学的には偶然の一致という見方もあるわ。でもね、たとえそうだとしても、空を見上げながら地上に意味を重ねたこと。それ自体が、人間の想像力の証だと思うの。

星を見てから建てたのか、建ててから星を見たのか…
ニャぞのは深いにゃ。

ロマンでコーヒーを一杯、科学でミルクをひとさじ。
ね、どっちも味わった方が楽しいよ。

石でつくられたピラミッド、そして空に浮かぶ星…。
人は地上と空をつなぐために、物語を積み重ねてきたのよ。それが本当かどうかよりも、何を信じて空を見上げたか。その想いが、いまもオリオンの星たちのなかに、ひっそりと光っているの。ピラミッドの石の影から、夜空の星の光まで…。私たちは、ずっと昔から目には見えない地図を描き続けているのよ。
レンくんたちはそっと空を見上げた。オリオンの三ツ星が、ピラミッドのように夜空に並んでいた。

国立天文台(NAO):https://www.nao.ac.jp/