人はなぜ、空を天国と呼ぶのでしょうか?古代から世界各地で、星空は魂の帰る場所―道しるべとして信じられてきました。なかでもオリオン座は、多くの文化で「死者がたどる道」として語られてきた特別な星座。今夜のカフェ鈴の音では、空に描かれたその「道しるべ」が、死後の世界とどんなふうにつながっていたのかを、静かにひもといていきます。
第14話 道しるべ―星を旅する人々
糸島の海辺にひっそりと開くカフェに、星と神話を愛する瑠菜(ルナ)教授がやってきました。子どもたちのまっすぐな質問に、やさしく、答えてくれる物語です。星や月を見上げながら「宇宙ってなんだろう?」を一緒に考えてみませんか…

✨星ってさ、死んだ人が行く場所って本当なの?

オリオン座があの世への道って聞いたことある!

とても古い時代から…
多くの文化が星を魂の帰る場所として見ていたのよ。たとえば古代エジプトでは、死後のファラオの魂は星となって夜空に昇ると信じられていたわ。オリオン座はとくに神の座と重ねられ、魂が向かう目印だったの。それはエジプトに限らないの。南米のナスカ文明では、大地に描かれた巨大な地上絵が星の動きと関係しているという説があるし、マヤ文明では、オリオンの三ツ星を三つの石と見立てて、宇宙の始まりの象徴として語っていたわ。
インドの神話や日本の伝承にも、星や天の川を「あの世とこの世をつなぐ道」として表現するものがたくさんあるの。つまり、世界中の人々が空にもうひとつの世界を重ねていたということなのよ。オリオン座はそのなかでも、夜空の中でとても目立つ星の並びだから、魂の道しるべとして選ばれたのかもしれないわね。
三ツ星が静かに導く道しるべ

そんなに遠い場所を、どうして昔の人が同じように見てたの?

星って、死ぬと行く天国みたいな場所?

空はね、どの国にいても…
誰もが同じように見上げることができる共有の風景だったの。だからこそ、人はそこに祈りや希望を重ねたのかもしれないわね。天国という言葉は宗教によっていろいろだけど、空に帰るという感覚は、世界中でとても自然に受け入れられてきたのよ。

ニャんだか、星は遠いけど近い場所って感じがするにゃ。

そうね。だから、誰かを思い出すとき、つい空を見上げちゃうのかもね。

オリオン座は、ただの星の並びではないのよ…。
それは、誰かの魂がたどったかもしれない星の道。私たちは空を見上げるたび、過去の人々の想いと、そっとつながっているのよ。その想いは、祈りであり、問いかけであり、ときには別れの記憶でもあるの。時代も言葉も違っても、空に何かを託す気持ちは、きっと同じだったはず。そして今、あなたが見上げたその星も、誰かの大切な記憶の一部かもしれない。オリオン座は、そんな想いを夜空で見守り続けているの。
三ツ星が静かに瞬く。どこか懐かしく、やさしい光が、夜空の道しるべのようにそっと輝いていた。

国立天文台(NAO):https://www.nao.ac.jp/
オリオン座を見つける2つのポイント

- 冬の夜空で、まっすぐ横に並んだ三つの明るい星を探してみて。これが「オリオンの帯」と呼ばれる、オリオン座の中心部分です。
- 三ツ星の左上に赤い「ベテルギウス」、右下に青白い「リゲル」が光っています。この2つの色の違う星を結ぶとオリオン座が見えてきます。