皆様、こんにちは。前編では、天気図の基本的な見方や、私たちの天候を左右する高気圧・低気圧について解説いたしました。後編では視点を地球規模に広げ、海流が天候にもたらす影響に加え、日本に甚大な被害をもたらすこともある台風がどのように発生し、成長していくのか、その仕組みに迫ります。

海流:海水の水平方向の流れの総称

天気、特に気温や降水量といった要素は、陸地の地形だけでなく、海の水の動きである「海流」にも大きく影響されます。海流は、地球上の熱を循環させる巨大な運び屋であり、気候や天気の形成に非常に重要な役割を果たしています。海流には、主に「暖流」と「寒流」の2種類があります。

暖流:黒潮・対馬海流

低緯度地域(赤道付近)から高緯度地域(北極・南極付近)へと流れる海流で、周囲よりも水温が高いのが特徴です。暖流が流れる沿岸地域は、冬でも比較的温暖で、雪が降りにくい傾向にあります。日本の太平洋側に流れる「黒潮(日本海流)」は代表的な暖流です。黒潮の影響で、日本の太平洋側は冬でも比較的温暖な気候が保たれています。また、暖流の上を通る空気は、海面から水蒸気を多く吸収し、湿った空気となります。これが陸地に到達すると、雨や雪を降らせる原因となることがあります。

寒流:親潮・リマン海流

高緯度地域から低緯度地域へと流れる海流で、周囲よりも水温が低いのが特徴です。寒流が流れる沿岸地域は、夏でも比較的涼しく、霧が発生しやすい傾向にあります。日本の太平洋側を流れる「親潮(千島海流)」は代表的な寒流です。親潮の影響で、日本の北東部は夏でも涼しい気候が特徴です。また、寒流の上を通る空気は冷たく乾燥しているため、降水量が少なくなる傾向があります。

海流:海水の水平方向の流れの総称

海流がもたらす天候の変化

海流は、その温度によって上空の空気に影響を与え、気圧配置や降水パターンを変化させます。例えば、エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった大規模な海水温の変動は、地球規模の気圧配置を変化させ、世界各地の異常気象の原因となることが知られています。

エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の海水温が平年より高くなる現象で、日本では冷夏や暖冬、西日本での渇水などをもたらすことがあります。一方、ラニーニャ現象は、海水温が平年より低くなる現象で、日本では猛暑や厳冬、集中豪雨などをもたらすことがあります。このように、海流は地球の気候システムと密接に結びついており、遠く離れた海の異変が、私たちの足元の天気にも影響を与えることがあるのです。

脅威と恵みをもたらす「台風」の誕生

日本列島に毎年接近・上陸し、時には甚大な被害をもたらす台風。これは、熱帯の海上で発生する「熱帯低気圧」が、風速が特定の基準(日本では17.2m/s以上)の勢力にまで発達したものと定義されており、その発生には特定の気象条件が不可欠です。

暖かい海水(26.5℃以上)

台風は、水温が非常に高い海域でしか発生しません。これは、暖かい海水から大量の水蒸気が供給されることで、上昇気流が活発になり、低気圧が発達するからです。台風は、この水蒸気をエネルギー源として成長します。そのため、太平洋高気圧の南縁にあたる、北緯5度~20度付近の海域が、台風の発生しやすい「ゆりかご」となります。

コリオリの力

地球の自転によって生じる「コリオリの力」が必要です。この力が働くことで、熱帯低気圧の周りに空気が渦を巻きながら流れ込み、中心に集まって上昇気流がさらに強まります。赤道付近ではコリオリの力がほとんど働かないため、台風は赤道の真上では発生しません。

上空の風が弱いこと

上空に強い風が吹いていると、発達し始めた熱帯低気圧の「渦」が壊されてしまうため、台風に成長できません。つまり、上空の風が弱い安定した状態で、ゆっくりと成長していく必要があります。

これらの条件が揃うと、海面から蒸発した大量の水蒸気が上昇し、雲が発達。その過程で凝結熱という熱が放出され、それがさらに上昇気流を促し、低気圧が深く、大きく成長していくのです。

台風の成長と進路

発生した熱帯低気圧は、周囲の気圧配置や上空の風に流されながら移動します。成長すると、「台風の目」と呼ばれる中心の晴れた部分が現れ、その周りには最も風が強く、雨が激しい「目の壁」が形成されます。

台風の進路は、主に「太平洋高気圧」の勢力によって決まります。太平洋高気圧が強い夏場は、その縁に沿って北西に進み、その後、偏西風に乗って日本付近で東寄りにカーブすることが多いです。秋になると太平洋高気圧の勢力が弱まるため、より早い段階で偏西風に乗り、日本列島に接近・上陸しやすくなります。

台風は、その巨大なエネルギーにより、暴風や大雨、高波、高潮といった様々な災害を引き起こします。そのため、接近が予想される場合は、気象情報を確認し、早めに対策を講じることが極めて重要です。

海流と台風発生のしくみ:まとめ

前編、後編を通して、天気図の読み方から、高気圧・低気圧、海流、そして台風のメカニズムまで、天気の様々な側面を探ってきました。天気は、私たちの想像以上に複雑で奥深い、地球の壮大な「息吹」なのです。今日から皆さんも、空を見上げたり、天気予報を見たりする際に、今回学んだ知識を少しだけ思い出してみてください。きっと、これまでとは違った視点で天気を感じ、その面白さを再発見できるはずです。天気の知識を深めることは、防災にも役立ちます。ぜひ、このブログ記事が、皆さんの天気への興味をさらに深めるきっかけとなれば幸いです。

海流と台風発生のしくみ:まとめ

国土交通省 気象庁